顔が好き and more...

 あれは一年前の、ちょうど今日のことである。

 ずっと頭の中だけでこねくり回していた「顔が好き」という気持ちの説明を、自分なりに言葉にして、少しばかりの遊び心とともにこの場所に書き残した。

clamperl.hatenablog.com

 

 理由なんてタイトルを偉そうに掲げておきながら、まともに伝わる説明ができているのか正直不安だったのだが、あのとき記事を読んでくれた方、さらにはコメントまでくれた方、その節は本当にありがとうございました。

 僕はこの記事の中で、以下のようなことを書いている。

そういえば、顔が好きにも種類があるということを言い忘れていた。けれどもこれは別の物語、いつかまた、別のときにはなすことにしよう。 

 「けれども」から始まる二文目は、実はミヒャエル・エンデの『はてしない物語』に登場する一節の引用である。「顔が好き」に関する話は果てしないよね、といった意味合いを込めて借用したものだ。むしろ、それ以上の意味はない。だから、これを書いた当初は「顔が好きにも種類がある」という話をするつもりは特になかった。

 ただ、ふと記事を見返していたら、偶然この文が目に飛び込んできた。この記事を機に、毎月なんらかの記事を更新しながら一年の歳月が流れたところである。ちょうどいい機会だ。一年前の自分が課した宿題を、今日ここで終わらせようと思う。

 ちなみに一応断っておくと、僕の顔ファンについての信条は、いまだに大きく変わっていない。

 

 まずはじめに言っておきたいのだが、「顔が好き」の種類というのは顔の種類ではない。目鼻立ちのはっきりした顔、シュッと整った薄い顔......というような分類をしたいわけではないということである。

 それから、僕自身の好みの話をしたいわけでも決してない。僕はTWICEのツウィさんの顔が好きだという話を、Twitterでもどこでも散々やってきている。でも、今ここでしようとしている話は、僕とは好みが異なる人々には当てはまらないものではなく、誰の顔が好きでも成り立つ(と僕が思っている)話だ。実際に説明したほうが早そうなので前置きはこのくらいにしておこう。

 

 理解していただくにあたって、僕が意識している「顔が好き」の種類は、大きく分けて三つに分類されるということから話そう。僕が意識している、などと書いているのは、種類数も分け方もこれだけが全てではないと思っているからだ。何か別の観点を持っている人がいたら、ぜひ教えてください。

 そうだな、三種類それぞれに呼称があったほうがわかりやすいので、造形型表情型機微型とでもしておこうか。分け方についてはずっと考えていたことだけれど、名前は即興で考えたのでわりと適当だ。それはともかく、この三種類の具体的な内容を中心に、今回は書き進めていきたい。

 

 まずは、造形型について。

 これは「顔が好き」の中でも「顔の造形が好き」という限定的な意味での好きのあり方である。造形とはすなわち、顔のパーツの形や大きさ、そしてその配置である。いや、こんな面倒な説明をしても仕方がない。要するに、一目惚れをしてしまうような「顔が好き」だ。

 もう少し言い換えてみよう。一般的に「好きな顔のタイプ」と言ったときには、この造形型に当てはまる顔のことを指すと思う。例えば、見たことのないアイドルグループの写真をパッと出されて、この中の誰が好きですか?と聞かれたときに答えるメンバー。それが「顔の造形が好き」である。顔のつくり自体に魅力を感じるということだ。

 今あげた例で重要なことは、好きなメンバーを決めるのに写真を見た、という点だ。写真とは、ある一瞬だけを切り取ったものである。その人が動いたり、話したりするのを見ることなく判断している。それがとても重要なのだ。時間の流れとは切り離された、ある一時点のみで「顔が好き」が生じている、僕の分類の中ではこれこそが造形型の条件である。

 しかし、別の写真を見たらそうでもなかった、ということは正直珍しくない。その瞬間の顔が好きだったことに間違いはないが、他の瞬間でも好きだとは限らない。一方で、どの一時点を見ても好きだと思うような顔、すなわちどの写真でも「顔が好き」が生じる場合、これはもう言ってみれば最強の「顔が好き」である。その人の顔が完全に好きということだ。個人的な話をすれば、そのレベルに到達したとき、僕はその人を推すことにしている。そう、TWICEで言えば、ツウィさんが僕にとっての造形型に当たる。本当に全写真で顔が好きなので。

 

 二番目の表情型について。

 造形型での説明に則ると、表情型は「顔の表情が好き」ということになるのだが、正確に言うと、ある特定の表情に対する「顔が好き」ではなく、見せる表情の幅やバリエーションに対する「顔が好き」を意味している。笑顔のときもあれば、怒った顔のときもある、そういった表情の豊かさに魅力を感じるということだ。

 よく「笑顔が好き」と聞くことがあるが、これには二種類あると常々感じていた。その人が笑顔になったときの顔自体、つまり造形が好きなパターンがひとつと、その人が笑顔になったときの普段の顔とのギャップ、すなわち表情の変化が好きなパターンがもうひとつである。お察しの通り、前者を造形型、後者を表情型に当てはめれば、よりサッパリと説明できるような気がするのだ。

 ある一時点のみで生じる「顔が好き」が造形型であるのに対して、ある二つの時点を比較したときの差、あるいは変化量に生じる「顔が好き」が表情型である。別の言い方をすれば、造形型がたった一枚の写真から始まる「顔が好き」であれば、表情型は複数枚の写真から始まる「顔が好き」である。写真一枚一枚がどうという話ではなく、色々な種類の写真があるという状態に心惹かれる。この複数の時点を比較したときに「顔が好き」が生じる、これが僕の思う表情型の条件である。

 表情が豊かであるかどうかは客観的にわかることであり、その意味で、造形型に比べれば個人の趣味嗜好の影響は少ないかもしれない。ただ、見る人によって注目する瞬間や表情は違うので、表情型の「顔が好き」も全員が一致するということはないだろう。わかりやすさのために、僕にとっての表情型を発表しておくと、それは間違いなくナヨンさんである。彼女は、人を幸せにする表情筋をお持ちだ。

 

 三つ目は、機微型である。

 これは非常に説明が難しい。そもそも、機微の辞書的な説明は「表面上はわかりにくい人の心の微細な動き、物事の移り変わり」となっている。「表面上はわかりにくい」と言っているのに、それを顔に見出そうとしていること自体、矛盾したネーミングだ。でも、感覚的にちょうどいい表現が機微なのである。「顔のここが好き!」といった明確な言葉では表せない、でもなんとなく顔を見ているとかすかに感じる魅力。視覚で捉える香りのような、そのどうにも掴みきれない「顔が好き」が機微型の真髄だと思っている。

 すでにあげた二種類の「顔が好き」は、写真を起点にしていると説明した。それに沿った説明をするならば、機微型の「顔が好き」は、動画や映像がその起点となる。人間は表情を時と場合によって変えるわけだが、写真というのは基本的にその変化の最初や最後を切り取るものだ。つまり、写真という静止画では、表情の変化の過程が削ぎ落とされることになる。機微とは最初に示した通り「物事の移り変わり」も指す言葉であって、つまりは「顔がどうやって変化したかということ」が見えて初めて分かるものだと言える。だから、そこに魅力を感じるためには、過程まで見える動画が必要なのだ。

 もう少し具体的な話をしよう。かなりカジュアルな映像、例えばVLIVEのような生配信の映像を見ていたとする。そうだな、仮に二人組で会話をしながら配信している状況を想像してほしい。相手の話を聞いているときの、相手を気遣うような視線の動きや、その人自身が話しているときの、だんだんと笑いがこぼれていく様子。こういった些細な部分を好きだと感じることは少なくないだろう。しかし、ここの顔が好きだったな、と思ってあとでスクショを撮ってみたものの、なんだかうまく伝わらないものになってしまう、といった経験はないだろうか。思うに、それが静止画では捉えられない機微による「顔が好き」なのだ。

 あまりに感覚的でうまく書けないのだが、ちょっとでも分かっていただけていたら嬉しい。ただ、感覚的であるということはすなわち、十人十色の「顔が好き」があるのがこの機微型ではないだろうか。「ハッキリとした理由はわからないけど、なぜか好きなんだよなぁ...」はだいたいここに当てはまるとも思っている。ちなみに僕は、ダヒョンさんのことを考えながら、機微型の説明を書いていた。彼女は、僕がいちばん楽しみにしてしまうブイライバー(存在しない用語)である。

 

 理論か何かが前提にあって考えているというわけではないので、最初に言った通り、他の分け方や種類もあるかもしれない。僕自身が様々な「顔が好き」を感じた瞬間を思い返してみたときに、今のところは大体この三種類に分けられるかな、という程度の話だ。新種の「顔が好き」が見つかったら、それはまだ見ぬ推しが増える瞬間かもしれない。

 それから、僕が文中で挙げているTWICEのメンバーは僕にとっての代表的な一例であって、他のメンバーはもちろん、TWICE以外の誰かに対しても、たびたび感じることのあるものである。もっと言えば、それぞれの人がどれか一つにだけしか当てはまらないわけではなくて、兼任してくれることも当然ある。よくある。

 何はともあれ、ふと「この人の顔好きだな......」と感じるたくさんの瞬間は、全てが同じものということはなく、好きの焦点が少しずつ違っていて、そしてどれも素晴らしいのである。

 

 またもやだいぶ長くなってしまったけれど、自分自身の宿題に対する回答はこんなところだろうか。

 「顔が好き」の種類や説明はこれだけではないというのはもちろん、僕の説明を部分的に受け入れていただけたうえでも、多種多様な「顔が好き」のあり方があると思う。様々な好みが画一的ではないからこそ、アイドルやオタクは面白いのだという気がする。

 この文章で主張したいことは特にないのだけれど、強いてあげるなら、顔ファンというあり方が薄っぺらいとはやはり言い難い、ということだろうか。ここで説明したことは、僕が掘り進めている「顔が好き」の図鑑みたいなものなのである。むやみやたらに「顔が好き」と言い続けているわけではなくて、もう少し詳細に語ることのできる、自分なりの "and more" があるよ、という話でした。

 今回も、一年前と同じく九つの段落で構成されていますが、それぞれの段落の頭文字は、NiziUメンバーの頭文字にしてみました(順番はぐちゃぐちゃですが)。改めて、こんな文章に目を通してくれた皆さんに再び感謝します。ありがとうございました。