APRICOT & NEON MAGENTA色の研究

はじめに

 僕は顔がいいアイドルが好きだ。色々と考えた挙句、こんな書き出しになってしまったことを許してほしい。考える時間が長くなると、いつも顔の良さに流れ着いてしまう。早速だけど、僕が今いちばん好きなアイドルはTWICEで、本当に全員顔がいい。だから、メンバー全員が一斉に映っている画面を見ると体温が上がる。それを映し出す液晶だってきっと喜んでいることだろう。

 好きなグループの人数にもよるが、全員が同時に映っているコンテンツというのはアイドルオタクをしていればたびたび出会うことができる。アルバムのジャケットなんかは大抵そうだし、動画であればMVであったり、音楽番組であったり、本当に数多く存在する。カメラが引いて映し出されるパフォーマンスや、バチバチにキマってるコンセプト画像なんかは毎回惚れ惚れするわけだが、TWICEの場合、これらとはまた違う興奮を僕にもたらしてくれるものがある。それが公式Twitterに上がる集合写真だ。

 音楽番組の収録後、あるいはライブ終わりなど、タイムラインに前触れもなくポンと現れる写真。これが極めて壮観。「じゃあ写真撮るから適当に並んで〜」くらいの軽さで撮ったであろう写真なのに。なんなら、話がちょうど盛り上がってるときにマネージャーさんに声をかけられて「え〜今〜?」とかちょっとばかりゴネた後かもしれない。それなのに、このクオリティ?見ているだけで目が良くなりそうな気さえしてくる。ただ逆に、他のコンテンツとの違いもこういう部分にあると思う。何を自然と呼ぶかはともかく、かなり自然に近いのだ。ポーズだって自由だし、何か決まりがあるわけでもない。監督や振付師が決めた場所ではなくて、そのとき一緒に喋っていたメンバーどうしが隣に来たり、テンションが高くて謎の動きをしようともそのままアップされたり、その場に流れていた空気がフィルターを通さずして送られてくる感じがする。

 ここまで考えたときに、ふと写真の中での並んでいる順番が気になってきた。やっぱり一緒にいがちなメンバーが近くに来やすい?真ん中に写りやすい人と端っこに写りやすい人いない?この人よく前列で変なポーズしてない?「並ぶ」という制約を除いて束縛の少ないこのコンテンツにおける文字通りの立ち位置は、9人のより広い意味での”立ち位置”の要素を含んでいるという可能性が思い浮かんでしまった。

 そうなったら調べてみるしかない。小学生以来の自由研究、やります。

調査

 調査対象は、TWICE公式Twitterアカウント@JYPETWICEの2015/10/20以降のツイートに添付された画像で、9人が過不足なく写っている集合写真(誰か1人でも写っていないものや、他の人と一緒に写っているものは除く)。全く同じ構図で複数枚アップされたものはそのうち1枚のみを対象にする。ちなみに、デビュー日以前にツイートあるの?って話だけど、その前はSIXTEENの写真などがアップされるアカウントだったので実は存在する。それから、デビュー直後はメンバー自身がリプ返とかしててわりと面白いので、「from:jypetwice until:2015-10-30」あたりでTwitter検索すると楽しい。

 それから、アルバムジャケットや音楽番組でのワンシーンなど、誰かの意図によって作り出された「作品」的なものは除外する。さらに、自撮りなどのように全員がかたまって写っている場合は、位置の定義が難しいから分析の対象外にした。結果として、横1列に並んでいる写真134枚と、前後2列に並んでいる写真175枚が残った。もしかしたらなんらかのミスで少し欠けているかもしれないけれど許してください。

どこに写りやすい?

  • 横1列の写真

 まずは、横1列の写真での整列場所について考えてみようと思う。図1のように、9人が横1列に並んでいる場合、左から順に1,2,3...と番号を振る(上に書いてある数字)。これにより、数字の大小で左右の位置を把握できる。一方で、真ん中を0として左右に番号を振ると(下に書いてある数字)、位置の左右にかかわらず、数字の大小で中央か端かという位置を把握できる。この番号づけにおける4の回数を数えれば、両端で写った回数を数えることもできる。このルールに従って、134枚の写真での各メンバーの位置を数字で表すことで整列場所の傾向を捉える。

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図1. 横1列の集合写真での整列場所に関する番号の振り方

 左右について1〜9の番号を振り、それぞれの回数をカウントした結果、表1のようになった。 134回写真を撮ったとき、平均的には各場所に約15回ずつ並ぶ計算になるが、偏りがあることがわかる。特に多いものを赤色、少ないものを青色で示した。

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表1. 横1列の集合写真での左右の整列場所

 例えばサナさんは頻繁に5番、つまり中央に写っているけれど、ジョンヨンさんやミナさんは中央にいることが滅多にないということだ。また、いちばん下にある平均は各メンバーが平均的にどの位置にいるかを計算で求めたものである。平均すると全員5前後となり、どうやら比較的左右にバランスよく並んでいるらしい。

 また、各年ごとに整列場所の平均を算出したので、その変化のグラフも載せておこうと思う。煩雑でわかりにくいかもしれないが、例えばツウィさんに注目すると、デビュー年は極端に右側に写りがちだったのが、時間が経つにつれて様々な場所で写るように変化していったことが見てとれる。

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図2. 整列場所(左右)の年ごとの変化

 次に、図1で下に書いた番号の振り方で回数をカウントすると、表2のようになった。なんとなく「ミとツは端に写りがち」みたいな印象があったので、個人的には少し意外な結果でもある。やはりこの数字の振り方だと、0は中央の1箇所、14は左右で2箇所ずつあるので、平均的には015回程度、それ以外が30回程度という計算になり、そこから大きく外れたものを先ほどと同様に色付けして示した。この数値は、平均値が小さいほど中央に写りやすいという傾向を表している。

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表2. 横1列の集合写真での端-中央の整列場所

 また、これも先ほどと同じく各年の平均値をグラフにしてみた(図3)。年を経ても各メンバーがおおよその傾向を保っていて、端に写りやすいグループ(JeongJiMi)と中央に写りやすいグループ(NaSaDa)、どちらにも属さないグループ(Mo・Chae・Tzu)のような感じでグループ分けができそうな気がする。

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図3. 整列場所(端-中央)の年ごとの変化
  • 前後2列の写真

 前後2列の写真については、横1列のときのように番号をふってもあまり意味がない。前に3人並んでいる場合と4人並んでいる場合などが混ざっていて、同じ数字が同じ位置を意味しないものになってしまうからだ。そこで代わりに、各メンバーが前列にいる回数や確率を考えることにした。カウントしてみたところ、偏りが半端ない。

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表3. 前後2列の集合写真で前列にいる回数と確率

 ジョンヨンさんが7割近くの確率で前列に写るのに対して、サナさんやミナさんは3割に満たない確率でしか前列に現れない。これを先ほどまで見ていた横1列での整列場所と見比べたところ、両端に写りがちだったジョンヨンさんとジヒョさんが前列に写る確率が高く、中央付近に写りがちだったサナさんは前列に写る確率が低いという関係に気がついた。

 その仕組みを考えるために、横1列で撮るか前後2列で撮るかの違いがどこから生まれるかという部分に着目した。例外はたくさんあるものの、その違いは簡単に言えば「そこにどれだけのスペースがあるか」だと思う。音楽番組の収録が終わったTWICE1列に並んで歩いてくるシーンはVLIVEなんかでもよく見かける光景だと思うけど、そういった流れで写真を撮るのであれば、スペースが狭い場合にはそのような1列でいる状態から2列の状態へと隊列を変える必要に迫られるわけだ。

 で、図4を見て欲しいんだけど、その隊列の変え方ってこうなんじゃない?それなら端の人が前列に行きやすい説明がつくんだけどどうですか?もちろんこれで全ての辻褄が合うわけではないし、本当の答えはわからないんですけど、データを集めることで今まで考えもしなかった傾向が見えてくるのは面白いなあって感じです。

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図4. 横1列から前後2列への変化

 前列に写る確率に関しても、各年ごとの変化をグラフで描いてみたのが図5。3枚目のグラフになって言うことでもないけど、カラフルな線が入り組んでるのって路線図を彷彿とさせますよね。2015年は例外的だけど、それ以降は各メンバーが傾向を保っているように見える。ただ、2015年や2019年は枚数自体が少ないから、確率で考えると誤差が生まれやすいところではあると思う。

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図5. 前列に写る確率の年ごとの変化

隣り合いやすいのは誰と誰?

  • 横1列の写真

 ここまでは個人の傾向について見てきたのに対して、ここからは誰と誰が隣に写りやすいか?というような複数のメンバーの間の位置関係を考えてみようと思う。横1列に並んでいる場合、両端にいる人は1人、それ以外の場所にいる人は2人と隣り合うことになる。それを各ペアについてカウントしてまとめたものがこちら。

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表4. 横1列の集合写真において各ペアが隣り合う回数

 表4の見方は多分わかると思うんですけど、例えばナヨンさんとツウィさんが隣に写った回数が27回ってことが左上の角のマスを見ることでわかるようになってます。この表で注意するべき点は、端に写る回数が多い人はそもそも隣り合う人数の合計が少なくなるということである。したがって、端に写りやすい2人が隣り合う確率は必然的に下がる、つまり回数も少なくなるはずである。そのような位置による補正を考慮したうえで、特に回数が多いペアと少ないペアをそれぞれ赤色と青色で示した。

 そうすると、端に写る回数が多かったはずのジヒョさんとミナさんが隣り合いやすいといった結果が得られた。確率が下がるって書いたばかりだけど、よく考えるとわりと当たり前なのかもしれない。端に写りやすいグループ(JeongJiMi)みたいな話を思い出してもらうと、同じグループに属するメンバーは同じような位置に写りがちなわけだから、グループ内で隣り合う回数は増えることになるのだろう。逆に言うと、グループが違うにも関わらず隣り合う回数が多いナヨンさんとジヒョさんのペアは特徴的だと言えますね。

 ここまでの話は一応もう少し慎重に考えたほうがよくて、位置の傾向が近いから隣に来やすいという方向の考え方以外に、隣に来やすいから位置の傾向が近くなるという逆の因果関係で見ることもできる。例えば、小学校で生徒が自由に席を決めていい席替えを敢行したとする。自分の仲良しの友だちの目が悪くて前の方の席がいいと言ったら、自分もその子の近くに座るために前の方の席を選ぶことになるだろう。ここで前の方の席を選んだという自分の行動には、自分自身の目の悪さや授業をちゃんと聞きたい気持ちは影響していない。場所の決め方にはそういうパターンもあり得るって話だ。

  • 前後2列の写真

 横1列の写真での考察を応用すると、前後2列の写真で前列に写りやすいジョンヨンさんとジヒョさんが隣り合う回数は多いはずだってことが予測できる。さっきまでの言い方を使うならば2人は同じ「前列に写りがちグループ」だから。そんな仮説を立てつつ、実際にカウントしたものが表5である。

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表5. 前後2列の集合写真において各ペアが隣り合う回数

 なんだか予測と違う。ジョンヨンさんとジヒョさんは前列に来やすいけど、どうやら隣に来ることが特別多いわけではないらしい。横1列のときも同じグループなのにあまり隣り合わないことを踏まえると、図4の説に沿って話すならば、2人はそれぞれ右端と左端から前列に来るようなイメージだと思う。一方で、ジョンヨンさんがサナさんミナさんとあまり隣り合わないのは、前列か後列かという傾向が大きく違うことから説明がつくし、この部分は予想通りの結果と言えそう。

 そもそも今回の場合だとそれぞれのペアは約34回ずつ隣り合う計算になるが、だいぶ偏っている。ところで、横1列の写真のときは特にコメントしなかったけど、サイダーのおふたり、そんなに偶然お隣でばかり写ることある?

終わりに

 ここまでまとめるにあたって、気をつけた点がひとつある。できるだけデータに見える行動以上の部分に踏み込まないことだ。つまりは、真ん中に写りやすいのはこういう人だ、とか、この2人が隣に写りがちなのはこういう理由だ、とか、そういった内面にまで突っ込んで語る部分を減らすように心がけた。まあそんなのわかんないし。でもこうやって見てみると、集合写真は完全にランダムな整列順ではなくて、意味ありげな偏りや規則性がそこにはある。それを「なんとなくこうだよね〜」って話すのではなくて、ちゃんと目に見える形にしたいなと思ってこれをまとめました。

 そういえば、今回のタイトルはコナン・ドイルの『緋色の研究』に由来している。ワトソンとホームズが知り合って最初の事件を記録したものだ。シャーロック・ホームズシリーズはワトソンの手記という形の小説だから、データをかき集めて文章を書いた僕はワトソン役。データから結論を導くホームズ役は、これを読んでくれた皆さんにもお任せしたいと思います。何かに活用していただければ幸いです。(何に?)

 最後に、今回調査した中でいちばん古い9人の集合写真を貼っておきます。お付き合いいただき、ありがとうございました。